LECTURE

食品包装基礎講座

袋の大きさと適正内容量

 
   ある液体食品を袋詰めにして販売しようとする場合、その内容量は、
・外観
・計量するうえで便利な量
・販売価格
・慣習として使用されている量
・消費の状態
・運搬、保管に便利な大きさ
などを考慮して決められる。一般には内容量が決まったあとに袋の寸法設計をする場合が多い。
   さて、内容量に応じた袋の大きさを決める場合、袋が大きすぎても小さすぎても商品としての欠陥を生じる恐れがある。表1に示したように、内容量に対して袋が大きすぎる場合でも小さすぎる場合でも、それぞれ商品性の低下を招き、販売者にとって不利であることには違いない。あらゆる条件を考慮して、最も適切な寸法設計がなされるべきである。
 

表1 内容量の多少による長所短所
  内容量が多すぎる場合 内容量が少なすぎる場合
長所 ○包装コスト低下
○商品としてのバリヤー性効率が良い
○消費者のイメージが良い
○積み重ねやすい
○破袋の危険性少
○熱殺菌効率がよい
短所 ○積み重ね不便
○破袋の危険性大
○包装ロス増加
○熱殺菌効率の低下
○過大包装のイメージ
○包装コスト増大
○バリヤー性効率の低下
○内容品形状の変化

 
袋の大きさと適正内容量についての実験
   そこで、内容物として水、フィルムにはナイロン/低密度ポリエチレン(ON/LLDPEを)を選んで、実験的に、袋の大きさと内容量の関係を調べてみた。その結果が表2である。実際に各寸法の袋をつくり、水をあふれるだけ入れ、約10mmのシール部分を閉じた状態での容量を最大量とした。したがって、フイルムの腰の強さや抑え具合で数10mlは違いが生じるので、寸法設計の際の一応の目安として考えてほしい(表3の最大量・適量についても同様である)。

 

表2.袋の大きさと適正内容量
袋の大きさ
(内寸)㎜
袋の表面積
c㎡
最大量
(実験値)ml
適量1
(実験値)ml
適量2
(実験値)ml
適量1/最大量
  %
適量2/最大量
  %
-
100×100
150
200
200
300
400
170
320
480
130
250
390
75
135
230
76
78
81
44
42
48
フイルム:
ON15μ/LLDPE50μ
ドライラミネート無地

内容物:水

最大量:
手詰め包装で、これ以上
入れると
シールが
できなくなる容積.


適量1:
うどんつゆ、
糸こんにゃく包装など、

液体の自動充填で多い内容量

適量2:
ラミネート強度、
シール強度に多少の

バラツキがあっても
この量であれば
安心できる.
これで破袋すれば

フィルムの強度に
問題があると

考えられる容量
125×125
175
225
312.5
437.5
562.5
340
550
820
240
425
640
150
225
390
71
77
78
44
41
48
150×150
200
250
300
450
600
750
900
600
930
1,260
1,600
405
650
920
1,265
225
380
520
745
68
70
73
79
38
41
41
47
175×175
225
275
612.5
787.5
962.5
970
1,430
1,900
675
990
1,440
365
540
845
70
69
76
38
38
44
200×200
250
300
800
1,000
1,200
1,440
1,980
2,700
980
1,410
1,850
560
855
1,120
68
71
69
39
43
41
225×225
275
325
1,012.5
1,237.5
1,462.5
2,080
2,830
3,650
1,340
1,870
2,385
855
1,110
1,600
64
66
65
41
39
44
250×250
300
350
400
1,250
1,500
1,750
2,000
2,875
3,830
4,660
5,830
1,830
2,520
3,190
3,930
1,100
1,560
1,845
2,500
64
66
68
67
38
41
40
43

 
  表2において、最大量を入れたとすると、手詰めではまともにはシールができず、作業能力が低下するし、販売においても店頭などでの積み重ねが非常に不便である。さらに、シーラントフィルムのポリエチレンに相当の厚さが要求されるし、破袋の危険も大きい。
   フイルムの性能も向上し、耐衝撃性に優れるメタロセンポリも一般的になってきたこともあって、自動充填包装機による最大量の包装も十分可能となっている。しかし、まだ表2の適量1でも安心はできない。フィルム加工において、ラミネート強度、シール強度、シール部のインキ強度などに若干のバラツキはあるもので、常に最強の状態に仕上げなければ破袋の憂き目をみるかもしれない。特に限界温度でのレトルト・ボイル殺菌は困難であろう。また、適量1では、通常の強度フィルムなら数回の落袋では大丈夫であるが、集積状態(段ボール箱詰め)での落下衝撃には不安がある。
 前述した全ての条件について安心できる量が適量2である。落袋テストでは10回以上でも破袋しない。適量は最大量の約40%であると考えてよい。この量を入れて破袋するようでは、袋の強度に欠陥があると判断される。
   以上の実験では内容品は水であるが、水より重いもの、例えば固液混合のものであれば適正内容量は、実験における水の重量とすればよい。また、固体や粉末であれば、その見かけの比重で実験における適量を割れば、おおよその見当はつくであろう。この場合、内容品の形状も考慮する必要がある。また、袋が大きくなればなるほど、バックフィルムであるポリエチレンの厚さを増加しなければならない。表面積200c㎡程度の小袋であれば30~40μでも可能だが、2,000c㎡の大袋では100μ以上の厚さが必要となろう。ポリエチレンに比べて、メタロセンPEやEVAの方が衝撃強度は大きい。各種シーラントの耐衝撃性を大きい順に並べるとつぎのようになる。
   EVA
、メタロセンPELLDPELDPE>耐熱CPP>CPP
   一方、ベースフィルムがポリエステル、ポリプロピレンであればナイロンに比べて衝撃強度は低下するので、今まで述べた実験値はあてはまらない。フイルム構成による耐衝撃性の順位はおよそつぎの通りである。
   ON/PE系>PET/PE系>OPP/PE系>ON/CPPOPP/CPPPET/CPP

 

表3.市販品調査
内容品 袋形態 袋寸法
内寸mm
最大量
ml
適量1
ml
適量2
  ml
市販品の
内容量ml
市販品内容量/最大量%
うどんつゆ 合掌自動包装 110×160 410 291 172 300 73
糸こんにゃく1 120×185 570 405 239 570 100
糸こんにゃく2 115×160 430 305 181 380 88
八宝菜水煮 四方シール袋 135×175 640 454 269 400 63
ヤングコーン水煮 105×105 185 131 78 160 86
ふき水煮 110×135 260 185 109 240 92
わらび水煮 100×180 410 291 172 280 68
ぜんまい水煮 135×170 610 433 256 380 62
詰替用液体洗剤 合掌自動包装 105×200 550 391 231 400 73
※実包品のフイルム構成はいずれもON系15μ/一般または耐熱LLDPE50~70μ
最大量:実験値(使用フイルム ON15/耐熱LLDPE50μ DL)
適量1:最大量×0.71
適量2:最大量×0.42

 
液体包装市販品調査
 表3には液量の多い市販品の内容量調査結果を示した。フイルムが柔らかく、しかも自動充填では最大量に近い容量の充填も可能である。半数以上が適量1を超えた内容量となっている。それだけ、フイルム構成、ラミネート強度などにおいて慎重な検討が必要となる。

袋の最大容量、適量、寸法についての計算式紹介
 袋の最大容量、適量、寸法についてはつぎのような報告がある。
◆袋の最大容積の計算式
  (0.33×S×b)-(0.11×a
S:袋表面積c㎡
a,b:辺の長さcm(b≧a) (文献)大須賀弘著「食品包装用フイルム」日報
上記の式を表2にあてはめてみると、柔らかいフイルムを使用し、自動包装における最大量に近いものとなった。
◆一般的な袋の容積計算式
 袋寸法に対して、適正容量というのが次の式によって表わされている。
  V=a/2 × a/2 × (b-a/2)  ただし、b≧a

 上記の式を表2にあてはめてみると、適量1に非常に近い数値になった。
◆黄金分割について
 袋に限らないが、たて(b)とよこ(a)の長さで、最も美しく見えるという比率が黄金分割であるといわれている。
[黄金分割(a:b)]
 2: (1+√5)≒ 1 : 1.618
なお、三方シール袋では1:1.4が適当と思われる。