LECTURE

食品包装基礎講座

脱酸素剤封入包装

 
脱酸素剤とは
脱酸素剤の効果
脱酸素剤を使用できる包装フイルム
使用上、取り扱い上の注意点
用語説明
エージレスの酸素吸収タイプ
エージレスの最新情報

 

 
(脱酸素剤とは)
 脱酸素剤は、Oxygen Absorberといわれ、密封された袋内の酸素を吸収し、食品の悪変を防止するという目的で使用される。使用方法は、小袋状の脱酸素剤を食品とともに、ガスバリヤー性(酸素ガス遮断性)の包装材料を用いて密封する。現在は、鉄の酸化反応を利用して酸素を吸収する鉄粉系が主流であるが、一部、有機系のものも利用されている。ガス置換包装などの保存技法に比べてイニシャルコストが少なくてすみ、小ロットから本格的生産まで対応できるため、広く使用されている。

(脱酸素剤の効果)
 脱酸素剤は、その言葉のとおり、酸素を吸収するものであるから、食品が空気中の酸素の影響をうけて悪変する現象を防止することができる。その効果を列挙すると次のようになる。
●カビ発生の防止
  カビは細菌や酵母と違い、酸素が無ければ生育できない。脱酸素剤を用いればカビ発生は完全に防止できる。
●油・ビタミンの酸化防止、風味変化、および、変色の防止
 油・ビタミンの酸化、風味変化、変退色なども空気中の酸素に起因することが多いので、酸素との接触を断てば防止できる。
●虫害防止
 完全に脱酸素(0.1%以下)できればコクゾウムシ、コナマダラメイガ、コクヌストモドキなどの害虫も10日前後で卵も含めて死滅させることができる。
●金属の防錆
 金属の錆も空気中の酸素さえなくせば発生しない.

(脱酸素剤を使用できる包装フイルム)
 脱酸素剤を用いる場合の包装材料としては、酸素ガス透過度が200ml/㎡・day・MPa .20℃以下のフイルムが適し、KOP、KON、KPETなどのラミネートフイルムが最も一般的に使用され、EVOH、VMPET、アルミ箔などのガスバリヤー性フィルムをサンドイッチにしたものもよく使用される。また、数週間程度の短期間保存の場合にはPET、ONのラミネートフイルムも使用例がある。

(使用上、取り扱い上の注意点)
 脱酸素剤を使用する場合、その能力を十分に発揮するためには、次のような点を考慮して、慎重に設計することが必要である。
●包装設計の手順としてまずタイプと大きさを選定する
脱酸素剤には用途に応じて各種のタイプがあり、食品の性質、包装形態によって使い分ける。また、袋内酸素量を測定または計算して、使用する脱酸素剤の容量(大きさ)を決める必要がある。
●封入位置
 トレイや仕切りを使用する場合、脱酸素小袋の酸素吸収面がフイルムやトレイに密着して脱酸素速度が遅くなったり、脱酸素しないことが生じる。このような場合、脱酸素剤まで空気が十分に循環するような配慮が必要である。また、食品成分による表面の汚れも酸素吸収速度を低下させる。
●完全密封であること
 脱酸素封入包装は、いくら酸素透過度の低い包装材料を使用しても、空気もれのある不完全なものであればその効果が得られない。特に合掌袋やガゼット袋では背貼部や折込部にシール不完全が生じやすく注意が必要である。また、摩擦や突刺しなどによる微少なピンホールでも脱酸素剤の効果はゼロになる。
●シール機とシール方法
 足踏み式、卓上式、エンドレスシーラーのいずれでも、シールはできるだけ両熱、波型または横目で、シール巾の広いものを使用した方がよい。自動包装機ではシール方式がボックスモーションでないと完全シールは困難で、不良率が高くなる。
●金属検知器
 鉄系の脱酸素剤は金属であるため、金属検知器に反応する。そのため、有機系の脱酸素剤を使用したり、検知器の場所を脱酸素剤封入以前に設する等の対策が必要である。
●発熱
 鉄系の脱酸素剤は化学反応であるため反応過程で発熱 る。最大60~70℃まで発熱することもあり、携帯用カイロもこの原理を応用しているほどである。発熱すると急速に反応するので、使用するまでに能力が減少することになる。したがって、脱酸素剤を入れた袋を開封すると、当面の使用量をテーブルにひろげ、熱がこもらないようにしなければならない。
●封入するまでの作業時間と使い残しの処理 
 脱酸素剤は外装を開封すると、直ちに空気中の酸素と反応を始めるため、きるだけ早く使用してしまう必要がある。速効型は1~2時間以内に使用しないとその性能がフルに発揮できない。自力反応型の標準タイプで作業時間(放置可能時間)は4時間、水分依存型で0.5~ 1日である。また使い残し品は空気を追い出して、酸素透過度の低い包装材料あるいは脱酸素剤の外袋に入れて熱シールしておかないとその効力をなくす。
●減圧現象が起こる
 空気中には約21%の酸素が存在する。この酸素は脱酸素剤によって除去されるため、袋内ガス量が減少し商品の形状や袋の寸法などによっては真空包装や脱気包装のような外観を呈することがある。例えばカステラ等の商品ではふんわりとしたボリュームが要求され、脱気状態になると商品価値を減ずる。
●発酵・腐敗防止効果はない
 カビは酸素がないと生育できないので、カビの生育防止には絶対的な効果がある。しかし酵母や細菌は、酸素がなくても生育できる菌種(嫌気性菌)があり、発酵や腐敗する食品の保存対策としては使用できない。
●炭酸ガスによって脱酸素能力が低下することがある
 脱酸素剤の種類やタイプによっては炭酸ガスのため脱酸素能力が低下するものがある。このため炭酸ガス置換包装と併用してもその効果は余り期待できない。
●低温における脱酸素速度の変化
  脱酸素剤の効果は20~40℃において最も発揮される。このため脱酸素剤封入後直ちに冷蔵すると脱酸素速度が著しく低下する。脱酸素は化学反応であるため温度依存性があり、温度が高いほど脱酸素速度が大きい。冷蔵以下の温度では、低温でも脱酸素反応が進行するタイプを使用する必要がある。
●食品によっては変色・退色、香り変化を促進させたり、異臭を発生させることがある。
 かんぴょう、イカ製品、魚類乾物など脱酸素剤を封入すると変色するものもあり、また、豆製品は戻り臭といって異臭が発生することもあるので事前のテストが必要である。

(用語説明)
水分依存型
食品の水分を吸収して反応を開始するタイプ。水分の多い食品向け。
自力反応型
エージレスの外袋を開封し、空気に触れた直後から反応 するタイプ。低水分食品に適す。

(エージレスの酸素吸収タイプ)
 現在主流の鉄系脱酸素剤を初めて商品化したのが三菱ガス化学で、その「エージレス」は種類の豊富さ、性能、品質の安定性、顧客への対応、新製品開発力等に優れているため圧倒的なシェアーを持っている。消費者における知名度も高く、脱酸素剤の代名詞にもなっている。そこで「エージレス」の種類、特徴等について紹介する。

水分依存型
FX---高水分食品用
FX-L--FXの耐油タイプ
FJ---超小型タイプ、耐油
FM---電子レンジ対応タイプ
自力反応型
SA---速攻タイプ、耐水・耐油
SS---冷凍(-25℃)・冷蔵用
Z----低水分食品用、耐油
Z-PU--酸性食品用
Z-PT--アルコール、油含有食品用
Z-PK--香り保持、乾燥剤可
複合型
GL---有機系、CO発生なし
E----CO吸収、コーヒー用
G----有機系、CO発生、耐油

※ほとんどのタイプでロール状のものも用意されている。
※FX、FXーL、Gタイプにはベルト状もある。
※超小型タイプとして、Z-10PR、Z-10PTR、ZJ-15PK、ZJ-15PT、FJ-20、FJ-20RPがある。

複合機能型
 Eタイプは酸素と炭酸ガスを同時に吸収する。レギュラーコーヒー用。Gタイプは酸素を吸収した分だけ炭酸ガスを発生するタイプ。袋が減圧になるのを防ぐ。主成分は有機系なので金属探知器にも反応しない。
ロールタイプ
 カットされてないものを巻取ったもの。自動投入機用。
ベルトタイプ
 カットされていない帯状のものを折り畳んで袋および段ボール箱に入れ、連続して取り出せる。自動投入機用。
エージレスアイ(酸素検知剤)
 袋内の酸素がエージレスで除去されたかどうかを色の変化で判断できる。酸素0.1%以下でピンク、空気中ではブルーになる。よく使用されるのは錠剤タイプであるが、ペーパータイプ(枚葉、ロール)、粘着タイプもある。

(エージレスの最新情報)
・GLタイプ
 有機系で金属検知器に反応しない。Gタイプとは違い、COを発生させないので嫌気性菌の低濃度COによる増殖促進がない。低水分から高水分まで使用可。
・エージレスZCタイプ
 厚さ0.9mmのカード型台紙用。20-50cc。自力反応型。
・エージレスFCタイプ
 カード型で台紙やしおりにもなる。自動投入可。Aw0.75以上。電子レンジ可。水分依存型。
・エージレスFLタイプ
 ラベル型エージレス。通常のラベル同様、粘着加工で簡単に固定できる。Aw0.75以上。電子レンジ可。自動包装機連動可。水分依存型。
・エージレスFPタイプ
パッキング型エージレスで、瓶のキャップ内側に装着して使用できる。Aw0.75以上。水分依存型。