LECTURE

食品包装基礎講座

JASによる表示改正と遺伝子組換え食品の表示方法

 
はじめに
 JAS法が改正され、本年(2000年)4月から施行される。これにより、消費者が商品を選択するために必要な食品表示の充実・強化が図られる。一方、容器包装リサイクル法でも分別収集のための識別マーク表示が実施されることになっており、さらに、厚生省ではアレルギー物質の表示について平成13年4月施行を目標として省令を改正する予定である。このように、包装食品の表示規制はますます複雑になり、しかも重要度を増してくる。今回は改正JAS法による表示関連の要点をまとめた。

改正JAS法による表示について

 表示に関する改正点は次の通りである。
①一般消費者向けのすべての食品に品質表示基準が適用される
②全生鮮食品に原産地表示が義務づけられる
③「有機野菜」、「有機農産物」など、「有機」という表示が、認定品以外は規制される
④遺伝子組換え原材料を使用した食品は表示が必要となる(ただし食品の種類による)
 改正JAS法の要点を下にまとめた。また、表1には品質表示基準の内容について示した。

 

<JAS法改正点>
<現行>   <改正後>
1 食品の表示の充実強化
表示対象品目:64品目
(うち青果物の原産地表示:9品目)
表示対象品目:一般消費者向けのすべての飲料食品
(すべての生鮮食品について原産地を表示)
 
2 有機食品の検査認証制度の創設
有機食品の検査認証制度なし
        ↓
不適切な「有機」表示の氾濫
有機食品の規格を設定(コーデックスに準拠)
          ↓
第三者認証機関(登録認定機関)が、ほ場ごとに生産者を認定
          ↓
第三者認証機関が認定した生産者が生産したもののみに「有機」と表示、流通(それ以外のものは「有機」の表示ができない)
 
3 JAS規格制度の見直し
○規格の定期的見直し、国際整合化について 法律上の規定なし

○登録格付機関が格付(サンプリングによる規 格への適合性検査)してマークを貼付

○公益法人等にのみ格付権限を付与
○5年ごとに既存の規格を見直し、不要となった規格を廃止等
規格制定等の際に国際規格を考慮

○事業者が登録設定機関の認定を受けて、自ら格付してマークを貼付

○民間会社等に格付等の権限を開放
表1.品質表示基準に基づく項目等(概要)
種類 品 目 例 共通表示事項 個別品目表示事項例 表示方法
個別品目 表示事項
加工食品 野菜・果実加工品
穀類加工品
めん・パン類
豆類調製品、食肉製品
酪農製品、加工魚介類
飲料、菓子類、油脂類、調味料
砂糖類、調理食品           等     
    名称、原材料名、内容量、

賞味期限(消費期限)、保存方法、製造業者(輸入品にあっては輸入業者及び原産国名)の氏名又は名称及び住所 
 魚肉ハム  調理方法、でん粉含有率 ・容器又は包装の見やすい箇所に一括して表示

・容器を包装紙で外装する場合は、外装紙に必要な表示をするか、又は容器の表示が外装紙を透かしてよく読めるようにするか、若しくは外装紙で隠れないようにすること     
即席めん  調理方法、使用上の注意
 トマト加工品  使用上の注意、固形量等
 凍豆腐 調理方法 
 調理冷凍食品  使用方法
風味調味料 使用方法
上記以外の生鮮食料品 農産食品
 精米、豆類
 野菜、果実等

畜産食品
 食肉類、食用鶏卵等

水産食品
 魚類、貝類、
 水産動物類、海藻類等
           等
名称、

原産地、

容器に入れ又は包装して販売する場合は内容量及び包装又は販売業者名
精米 品種、産年、精米年月日 容器又は包装の見やすい箇所
又は
消費者の見やすい箇所(立札、提示その他消費者が認識できる方法)
水産食品 解凍、養殖

 
注)一般消費者向けのすべての飲食料品について表示を義務付ける(ただし、飲食料品を製造し、加工し、若しくは調理しその場で一般消費者に販売する場合または飲食料品を料理し、若しくは設備を設けて客に飲食させる場合を除く)。
  表示事項については、共通表示事項の他、個別品目について別途追加的に定めることが可能。
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 品質表示基準とは、JASの制度が任意の制度であるため、これだけでは消費者保護に十分ではないことから、表示の適正化を図る必要がある品目について、JAS規格の認定を受けていなくてもJASと同等の表示が義務付けられるものである。平成11年6月21日現在、JAS規格のある52基準と、JAS規格はなく、品質表示基準だけが定められている12基準、合わせて64基準が制定されている。今回の改正では、一般消費者向けの全食品に品質表示基準が適用されることになり、共通表示項目、個別品目表示項目の表示が義務づけられる。
  生鮮食料品の「原産地表示」は、いままで9品目が指定されていたが、これもすべての生鮮食品が対象となる。
   品質表示基準施行期日は平成12年4月1日である。ただし、加工食品については平成13年4月1日以後に製造または加工される食品に適用となる。
   生鮮食品の原産地表示は平成12年7月1日以後に販売される生鮮食品に適用される。
   「有機野菜」、「有機農産物」など、「有機」の表示については、第三者認証機関が認定した生産者が生産したもののみに表示・流通が認められ、それ以外は「有機」の表示はできない。輸入有機農産物についても同様に扱われる。

遺伝子組換え食品の表示の内容及び実施の方法
   ほかの法規制と異なり、任意ではあるが、「遺伝子組換えでない」という表示が認められていることが特徴である。表2に内容をまとめた。
 遺伝子組換えと関係のない農産物等(例えば、現時点では米や小麦等)及びこれを原材料とする加工食品については、また、消費者に誤解を与えたり、商品販売上の不公正が生ずるおそれがあるので、「○○(遺伝子組換えではない)」等の表示は不適切となっている。これらの表示は、改正JAS法第19条の8の規定に基づく品質表示として実施される。
   遺伝子組換え食品の表示規制は平成13年4月1日以後に製造または加工(輸入)される加工食品および販売される生鮮食品に適用される。

 

表2.遺伝子組換え食品の表示の内容および実施の方法
食品の分類 品目 表示方法
組成、栄養素、用途等に関して従来の食品と同等でない遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品 <指定食品(予定)>

高オレイン酸大豆並びに同大豆油及びその製品(現在、安全性評価申請中で確認後指定予定)
・「大豆(高オレイン酸・遺伝子組換え)」等の義務表示
従来のものと組成、栄養素、用途等は同等である遺伝子組換え農産物が存在する作目(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、(ナタネ、綿実))に係る農産物及びこれを原材料とする加工食品であって、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたタンパク質が存在するもの <指定食品(予定)>

豆腐・豆腐加工品、凍豆腐、おから、ゆば、大豆(調理用)、枝豆、大豆もやし、納豆、豆乳、味噌、煮豆、大豆缶詰、きな粉、煎り豆

および、これらを主な原材料とする食品

コーンスナック菓子、コーンスタ-チ、トーモロコシ(生食用)、ポップコーン、冷凍・缶詰トーモロコシ

および、これらを主な原材料とする食品

ジャガイモ(生食用)

大豆粉を主な原材料とする食品

植物タンパクを主な原材料とする食品

コーンフラワーを主な原材料とする食品

コーングリッツを主な原材料とする食品
・遺伝子組換え農産物を原材料とする場合

→「大豆(遺伝子組換え)」、「大豆(遺伝子組換えのものを分子別)」等の義務表示

・遺伝子組換えが不分別の農産物を原材料とする場合

→「大豆(遺伝子組換え不分別)」等の義務表示

・生産・流通段階を通じて分別された非遺伝子組換え農産物を原材料とする場合

→「大豆(遺伝子組換えでない)」、「大豆(遺伝子組換えでないものを分別)」等の任意表示又は表示不要
従来のものと組成、栄養素、用途等が同等である遺伝子組換え農産物が存在する作目(大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実)に係る農産物を原材料とする加工食品であって、組み換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質が加工工程で除去・分解等されることにより、食品中に存在していないもの 醤油、大豆油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン、コーン油、ナタネ油、綿実油、マッシュポテト、ジャガイモ澱粉、ポテトフレーク、冷凍・缶詰・レトルトのジャガイモ製品

および

これらを主な原材料とする食品
・表示不要

・ただし、生産・流通段階を通じて分別された非遺伝組換え農産物を原材料とする加工食品にあっては、「なたね(遺伝子組換えでない)」、「なたね(遺子組換えでないものを分別)」等の任意表示が可能

 
(注1)品目欄の食品は、技術的検討のための小委員会報告において、現在、安全性評価確認済みの6作物22品種のうち、現実に流通している大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、綿実を原材料とする食品として整理されたもの。
(注2)「主な原材料」とは全原材料中重量で上位3品目で、かつ、食品中に占める重量が5%以上のもの。
(注3)酒類(ビール、ウイスキー、焼酎)は、上記表の最下段に該当。
 

遺伝子組換え食品に関する表示事例
<味噌>
名称
原材料
 
内容量
賞味期限
保存方法
製造者
調合味噌
はだか麦、大豆(遺伝子組換えでない)、
米、食塩
1㎏
00.4.1
直射日光・高温多湿を避け常温(夏場冷蔵)にて保存して下さい。
株式会社 ○○○ 住所