LECTURE

食品包装基礎講座

包装用フイルムの性能用語

<食品包装用フイルムの性能用語>

1.衛生性・安全性 食品衛生法
 食品を包装するとき、そのフイルムが無害、無毒であることは基本的な条件である。食品衛生法(第9条)では、人の健康を損なう恐れのある容器包装の製造、輸入、販売、使用を禁止しており、厚生省の定めた規格試験に適合したものでなければ使用できない。フイルム業界や関連業界では自主規制を実施して安全性を確保している。また、無味・無臭であることも必要条件であるが、樹脂臭がまれに問題になることがある。

2.引張強伸度 JIS-K-7127、ASTM-D882-95a
 一定の巾に切ったフイルムを、片方を固定し、もう片方を定速で引張り、フイルムが切断した時の荷重を引張強度という。また切断した時点の伸びを%であらわしたのが引張伸度である。引張強度が大きいほど強いフイルム、引張伸度が大きいほど伸びやすく柔軟なフイルムである。

3.破裂強度 JIS-P-8112、ASTM D774-92a、食品衛生法(器具及び容器包装一般試験法--以下同じ)
 一般にはミューレン型試験機で測定する。フイルムの一定面積に圧力をかけ、フイルムが破裂したときの圧力をKg/c㎡で表す。ON、PETなどの延伸フイルムは大きな値を示す。セロハン、紙など吸水性フイルムは水分含量が大きいと数値は小さくなる。

4.引裂強度 JIS-K-7128、ASTM-D1004-94a
 伝播引裂強度はトラウザー法やエルメンドルフ法で測定する。フイルムに切り目を入れておき、切り目の両端を一定荷重で引き裂いて、その抵抗を数値で表す。この数値が小さいほど裂け口から破れるのに抵抗が小さい。袋の開封性にも関係する。PEやCPPなどの未延伸フイルムは伸びやすいので引き裂きにくい。一軸延伸OPPや一軸延伸HDPEはたて方向に易引裂性をもつ。

5.耐衝撃性 JIS-K-7124、JIS-Z-0238、ASTM-D1709-91
 フイルムの引張強度やシール強度が大きくても、耐衝撃性がなければ液体食品や粒状食品の包装で破袋事故を起こしやすい。衝撃強度を測定する方法は各種あるが、機械によらない簡便な方法としては落袋試験がよく利用される。完全に密封できる袋をつくり、一定量の水(小豆などの粒状物でもよい)を封入して、一定の高さから落下させ、破袋の有無を調べる。強度が大きくても脆い材質は耐衝撃性に劣る。

6.耐ピンホール性 ASTM-D1164、食品衛生法、JAS(レトルトパウチ食品--以下同じ)
 フイルムは揉んだり、突起物に接触したり、局部摩擦を受けたりすると簡単に針先程度の小さい穴が発生する。これがピンホールである。折り曲げや揉みによって生じるものを屈曲ピンホール、突起物によるものを突き刺しピンホール、摩擦によるものを摩擦ピンホールといい、どれが原因かによって対策も異なる。
 フイルムの折り曲げ先端部が段ボールなどの側面に微震動でこすられると、ほとんどのプラスチックフイルムでは簡単にピンホールが発生する。液体包装、ガス充填包装、脱酸素剤包装では、この摩擦による事故が非常に多く、当研究室では耐摩擦ピンホール性に優れたフイルムを選定し、多くの実績を上げている。折り曲げによるピンホールや突刺強度の測定は機械もあり標準化されているが、摩擦による耐ピンホール性は機械的に評価することは難しく、数字によるデータが少ない。

7.腰の強さ ASTM-D-882-64T
 包装品の商品価値を高める要素として、フイルムの腰の強さを要求されることがある。硬い包装の方が内容品の保護性があり、ボリュウム感を増し、見栄えもよくなる。ヤング率(弾性率)で評価することが多い。

8.すべり性(スリップ性) JIS-K-7125
 一般には表裏とも滑りやすいフイルムのほうが都合が良い。表面のすべりが悪いと自動包装機にかかりにくく、作業性も悪い。内面のすべり性も同じで、自動包装機適性が悪くなり、ピッチがあわなくなったり、しわが入ったり、内容物が充填できないということが起こる。すべり性の評価は摩擦係数で表す。逆に、滑りすぎても都合の悪い場合があり、表面あるいは内面をわざと滑らないようにすることもある。

9.耐ブロッキング性
 巻取や、袋の重ね置きで、フイルム同士が密着し、すべりにくくなったり、剥がれなくなることをブロッキングという。巻取の状態でブロッキングが生じると包装機にかかりにくくなる。また袋の状態では、袋同士が剥がれにくくなったり、開口性が悪くなる。一定環境条件で荷重をかけてブロッキングするかどうかを判断する。

10.帯電防止性(静電気防止性) JIS-K-6911
 ほとんどのプラスチックフイルムは強い帯電性をもっている。帯電すると微粉末の付着によるシール性、作業性の低下、陳列時のほこり吸着による美観の低下等が生じる。包装フイルムにとって静電気はないほうが好ましい。そこで帯電防止剤の練込みやコーティングによって静防タイプのフイルムが製造されている。評価法は、表面固有抵抗を測定する方法、灰吸引法などが用いられる。

11.ガスバリヤー性(気体遮断性)JIS-K-7126 ASTM-D1434-82
 プラスチックフイルムは多少なりとも酸素ガス、炭酸ガス、窒素ガス等の無機ガスを透過させ、この透過量が少ない程ガスバリヤー性に優れているという。ガス透過度はml/㎡・day・MPaまたはfmol/(㎡・s・Pa)(旧単位:cc/㎡・24hrs.atm.)の単位で表される。ガスの種類で透過速度が異なり、二酸化炭素は透過しやすく、酸素ガス、窒素ガスの順で透過しにくくなる。

12.透湿度(水蒸気透過度) JIS-Z-0208、JIS-K-7129、 ASTM-E96-94
 プラスチックフイルムは水蒸気(湿気)を透過させ、包装食品の吸湿、乾燥の原因なる。JIS規格による単位はg/㎡・day、40℃,90%RHで、この数値が小さいほど防湿性に優れている。

13.耐油性・耐薬品性 JIS-Z-1515、JIS-K-7114、JIS-K-7107、ASTM-D722-93
 油性食品を包装する場合にはフイルムの耐油性が必要となる。ほとんどのフイルムは実用的な耐油性をもつが、PEやCPPの単体は油脂成分を透過させる。 各種薬品、食品添加物、香料などに対する耐性もフイルムによって異なる。例えば、ポリエステル(PET)はアルカリに弱い。ポリスチレン(PS)は有機溶剤に溶けるし、ポリ塩化ビニルなども特定の薬品に溶解する。

14.保香性(香気保存性)
 プラスチックフイルムは、ガスや水蒸気を透過させるのと同じく、食品の香気成分も多少なりとも透過させる。香気成分の透過が大きいと、保存中の香りの逸散、外部からの臭気の吸着などの問題が生じる。保香性は、ガスバリヤー性の数字とある程度比例するが、完全に一致するものではない。フイルムの種類と香気成分によって透過速度が異なる。ガスクロマトグラフィーによる測定や官能による評価が一般的である。

15.ヒートシール強度 JIS-Z-0238、食品衛生法、JAS
 一般の食品包装用袋は熱による接着である。このヒートシール部の引張強度をヒートシール強度と言い、N/15mm(1Kg/15mm巾=9.8N/15mm)で表すことが多い。強度が大きいほど丈夫な袋である。

16.低温ヒートシール性
 シーラントフイルムは低温でシールできるほど自動包装機適性や作業性が良くなる。自動包装機では包装スピードのアップ、ロスの低減が計れる。また袋の仕上がりもきれいになる。フイルムがどの程度の低温シール性をもつか、ヒートシール曲線を作成して比較すればわかりやすい。

17.ホットタック性
 たてピローの重量物自動包装で、シール直後、シーラント樹脂が溶融状態でもシール強度があり、内容物充填時の圧力衝撃にもシール部が剥離しない性質をホットタック性があるという。また、よこピローでもガス充填包装におけるフラッシュガスの圧力によるシール部の剥離防止のためにホットタック性が要求されることもある。一般に溶融したときの樹脂の粘着度が高いものほどホットタック性がよい。

18.夾雑物シール性
 包装時にフイルムの内面(シール部)に内容物である液体、粘体物、粉末などが付着してもシール性が低下しにくく、安全に密封シールができる性質を夾雑物シール性に優れているという。

19.耐圧強度 JIS-Z-0238、食品衛生法、JAS
 主として液体包装の場合に必要な測定項目で、包装品に一定荷重をかけて液の洩れがないかどうかを判定する。

20.耐水性、吸水性 JIS-K-7209
 紙、セロハン、ビニロン、ナイロンは水に浸漬したり、高湿度に放置すると吸水、膨潤し、本来のバリヤー性、腰の強さなどを失う。したがってビニロン系フイルムは両面に耐水性のフイルムを貼り合わせて使用することが多い(OPP/EVOH/PEなど)。

21.耐寒性 JIS-K-7216
 冬期北海道の寒冷地では気温が-20℃以下にもなり、耐寒性のないフイルムで包装したものはしばしば破袋事故を起こす。冷凍食品では-20℃以下、急速冷凍で-40℃あるいは-70℃にも耐えなければいけないこともある。耐寒性がなければ脆化、破れ、ピンホールなどが生じる。

22.耐熱性
 包装食品を加熱殺菌する場合、殺菌温度に耐えるだけの耐熱性をもったフイルムを使用する必要がある。
カステラ、まんじゅうなどの表面殺菌のためには熱風や赤外線による乾熱殺菌が、多水分系の食品は真空あるいは脱気包装してボイル殺菌、蒸気殺菌、レトルト殺菌などの湿熱殺菌が行われる。樹脂の融点や収縮率で評価できるが、変形、変色、内面密着などの有無も評価要因になる。

23.熱水・熱風収縮率
 ボイル殺菌やレトルト殺菌で、フイルムの収縮率の影響で、袋が歪んだり、容器フタ材の張りが不十分であったり、内容積が変化することもある。収縮包装や収縮ラベルでは熱風収縮率が性能や外観の仕上がりを左右する。

24.耐候性 JIS-K-7219
 プラスチック製品で、屋外で使用するものに耐侯性のない樹脂を採用すると、たちまち劣化して使用できなくなってしまう。一般の食品包装にはあまり関係のない性能であるが、PP樹脂は屋外で太陽光に暴露されると劣化しやすい。PEはPPより耐侯性はあるが、やはり劣化する。PETやONは耐侯性に優れている。
ウェザメーターによる加速テストで評価できる。

25.透明性 JIS-K-7105、ASTM-D1003-95
 フイルムは透明性がよいほど内容品がよく見えて商品価値が向上する。シーラントフイルムではPEやEVAにくらべてCPPのほうが透明性、腰の強さに優れている。PET、OPP、ONなども透明性は良い。
光の透過率またはHaze(曇価)で評価する。

26.遮光性 JIS-K-7105
 食品にとって光は大敵である。油脂成分の酸化、変色、ビタミンの破壊等を引き起こし、商品寿命を短縮させる。蛍光灯や電球の光でも長時間になると影響が生じる。太陽光線のエネルギーは電灯の比ではなく、直射日光下では短時間でもたちまち酸化する。特に紫外線は微量でも影響が大きい。

27.開封性
 ほとんどのプラスチックフイルムは端部を手で引き裂くことができないので、切り目をつけて手で開封できるようにしてある(サスペンダーカット)が、それでも直線的に切れないことも多い。そこで手切れ性のよいものや直線カット性を改善したものもある。

28.イージーピールオープン性(易開封性)
 容器包装を開封するとき、手で簡単に開封できると便利である。最近の成型容器包装はイージーピールオープンになっているものが多い。カップに工夫してあることもあるが、一般にはイージーピール用樹脂をフタ材のシール面にラミネートあるいはコーティングして用いる。最近ではレトルトに使用できるものもある。