LECTURE

食品包装基礎講座

ピンホール検出機

 
はじめに   X線異物検査機、金属検出機などと共に注目したいのがピンホール検出機である。展示会に初めてデビューしたときからかなりの年数が経っているので、技術的に進歩し、実績もついてきたように思われる。
 加工食品のほとんどは容器や袋に密封されて流通している。もしその容器にピンホールや密封不良があれば腐敗、カビ発生、吸湿、酸化、液もれなどの事故になり、時には回収にも発展する。食品メーカーにとって最も警戒すべきクレームのひとつである。ピンホール検出機の役割は、市場に出ていく包装食品の密封不良を検査し、不良品の流出防止と、品質の向上と安定を計ることである。オンラインシステムとして1千万円~2千万円もする高価な設備であるにもかかわらず、食品メーカーや医薬品メーカーに売れている。ピンホール検出機にもいろいろなタイプがあり、包装食品の形状(袋、容器、チューブなど)、形態(ガス充填、含気、真空、液体など)、内容食品の性質によって採用すべき装置やシステムが決まってくる。そこで、メーカー別に不良品の検出原理とその代表的な検出機を紹介する。
 
ニッカ電測株式会社
 ニッカ電測の食品用ピンホール検出機は、品質保証のためのシール不良や小さな穴を検出自動選別する機械である。もちろん、製品の噛み込み不良品の検出も可能である。
 ニッカ電測の食品ピンホール検出機HSE型シリーズ(写真1)は高電圧印加方式でハム・ソーセージ・カップゼリー・レトルト製品など、フイルム等による絶縁包装され、内容品が導電性をもつ製品に使用できる。

 


 
写真1.ニッカ電測のHSE-525(袋物用)
 

 
絶縁フイルムによる包装品は通常大きなインピーダンスとして働くが、これに高電圧をかけてピンホールがあれば、インピーダンスが低下する。このわずかな変化を電流として取りだすことによって検出する(図1)。検出感度実績として、0.4ミクロンの穴径を検出できる。
 


 
図1.高電圧印加方式の検出原理
 

 
株式会社 島津製作所  カステラ、ケーキ、和菓子、チーズなどの品質を守るために、包装用パック内に炭酸ガス等の特定のガスを入れて封じ込んでおくことが行なわれている(ガス置換包装)。これは、空気中の酸素や水分によって品質が変化することを防ぐためのもので、この食品包装リーク検出装置は炭酸ガスあるいは炭酸ガス混合ガスによって置換包装する製品の生産ラインにおいて、製品のパックが終わった工程で、袋内の炭酸ガスの漏れを自動的に全数チェックする。   写真2.島津製作所の食品包装リーク検出装置
 
 包装がおわった製品をチャンバーで真空にし、炭酸ガスが漏れているかをガス検知機で調べる。基準量以上のガス漏れがあれば不良品と見なされる。微量の炭酸ガスを瞬時に高精度検出できるセンサーを採用しているので検出動作も完全である。食品包装ではほとんど使用しないが、ヘリウムガスも非常に高感度で検出できることからテスト用として応用できる。ヘリウムは100ミクロン、炭酸ガスでも200ミクロンの小さな穴(ピンホール)も見逃がさない。小さな袋詰めの場合、数個をまとめて、あるいは出荷梱包(ダンボール)単位で、約50~60秒のサイクルで短時間に検査することができる。 非接触、非破壊で全製品を検査するので、検査に使用した製品も出荷できる。通常の運転は全自動で行なわれるので人手がかからない。

 


 
図2.島津製作所の真空チャンバー式検出装置
 

 
高千穂精機株式会社   PLT3000シリーズは、水没確認や浸透液確認などに代わる非破壊の品質管理用ポータブル型パッケージリークテスターである。
 


 
写真3.ポータブルリークテスター
 

 
 検出方法は、電圧印加方式ではなく、エアー直圧方式である。ピンホールやシール不良から漏れ出す内部空気を、高感度圧力センサーで検出する。  PLT4000および7000シリーズは高千穂精機独自のダイレクト圧力検査方式(特許)により、短時間で高感度な検査ができる。判定基準値が設定できるので検査結果に個人差がなく、またデータ管理プリンターや データ処理ソフトにより検査結果の管理が可能である(オプション)。
 カラーグラフィックディスプレイの採用により、計測状況、判定結果、グラフ表示、 各種設定表示および変更、エラーメッセージなどが簡単に鮮明に見ることができる。また、高速デジタル回路(処理速度2000回/秒)と独自のプログラミング技術により、再現性に優れた信頼性の高いデータが得られる。

 


 
写真4.全自動ロータリー型リークテスター
 
表1.PLT4000シリーズ各機種の性能表
  PLT-4710-25 PLT-4508-60 PLT-4324-100 PLT-4224-140
製品寸法 350×140×40mm 110×60×30mm 240×100×60mm 140×140×50mm
処理能力 1500個/時MAX 3600個/時MAX 6000個/時MAX 8400個/時MAX
検査製品 医薬ソフトバック 半生菓子
ウエットティッシュ LL米飯
※ 記載機種は標準仕様モデルの一部(次表も同じ)

 
写真5.全自動並行移動型リークテスター
 
表2.全自動並行移動型LT7000シリーズの性能表
  PLT-7305-20 PLT-7308-40 PLT-7504-60 PLT-7308-60
製品寸法 320×190×50mm 230×150×10mm 110×60×30mm 200×180×20mm
処理能力 1200個/時MAX 2400個/時MAX 3600個/時MAX 3600個/時MAX
検査製品 袋入りチーズ 加工食品 半生菓子 LL麺

 
日新電子工業株式会社   電圧印加式のピンホール検出機の性能の重要なポイントは、電極の設計とその材料、性能にある。
 日新電子工業のNPC-501型ピンホールチェッカは、独特の電極を開発完成したことにより、次のような特徴を実現した。
①アモルファス金属繊維は、しなやかで、復元性の高い特徴を発揮するため、検査物の接触しにくい部位を減らし全表面くまなく電圧印加できるので、低電圧印加による検査を可能にした。非接触式電圧印加方式は、原理的に印加電圧が高くなり安全性に問題があるため、原則として厚もの包装材以外は適用しない。
②日新の多段式電極は、検査機内の検出の流れに沿い、ステップごとに検査物の全表面にくまなく電圧印加することを可能にした。又多段式電極構造を装備。
③日新の回転式電極は、茹麺などのピロー包装品などで変形波うちしたシール部の、電極の接触しにくい部位に対する適正電圧印加対策として開発したもので、一対の回転電極で変形部位を挟み込み追従効果を発揮する。
④その他、イージーオペレーション機能として、99種類の製品銘柄別の特性を記憶でき、操作は銘柄切換だけで常に最適条件の検査が可能である。

 

表3.日新電子工業 NPC-501
処理量 100個/分(製品の形状寸法により変わる)
出力 検出(アラームおよび除去信号)
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 200VA
※標準型以外の型式では仕様は変わる

 
写真6.日新電子工業 電圧印加式のピンホール検出機
 

 
(代表的なピンホール検出機メーカーと装置の方式)
▼ニッカ電測株式会社

〒350-1155  埼玉県川越市下赤坂710
TEL 049(266)7311
http://www.nikka-densok.co.jp/products-top1.htm
電圧印加方式、エアー加圧方式など

▼株式会社 島津製作所

〒604-8511 京都市中京区西ノ京桑原町1番地
TEL 075-823-1111(代表)
http://www.shimadzu.co.jp/products/food/others/othr02.html
ガス分析型

▼高千穂精機株式会社

〒169-0051 新宿区西早稲田3-30-22 第2荻生ビル
TEL 03-3204-0611
http://www.takachihoseiki.co.jp/index.htm
エアー加圧方式、オフライン用ガス分析型

▼日新電子工業

〒136-0071 東京都江東区亀戸1丁目29番13号
TEL(03)3683-5171(代)
http://www.nissin-elc.co.jp/
圧印加方式
 
(参考文献)
各メーカーのカタログ、資料、および、ホームページ