食品衛生法による包装食品の表示方法
包装食品の表示の意義 ほとんどの食品が包装されるようになり、包装食品の表示は商品の顔ともいわれるようになった。消費者が加工食品を購入する手がかりとして最も多く利用するのは表示である。さらに、表示の中でも注意して観察する項目として、第一に賞味期限、以下銘柄、JASマーク、原材料名となっている。このように表示は商品の選択、つまり安全性の確認と比較評価のために重要な役割を果たしている。
そこで、表示の基本的な条件として次に挙げる3つの原則が守られなければならない。
(1) 消費者が商品を正しく鑑別することができる表示であること。
(2) 消費者の安全を確保するために必要かつ十分な表示であること。
(3) わかりやすく明確に表示されていること。
この3原則に沿って、表示されるべき事項あるいは表示禁止事項がいくつかの法令によって規制されている。今回は、食品衛生法による包装食品の表示項目について要点をまとめた。なお、詳細は食品衛生法、省令、規則、通達等に記されており、末尾にこれらの資料名を示した。
<食品衛生法による表示基準> | |||||||||
名称 | 消費期限又は賞味期限である旨の文字を冠した年月日※4 | 製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名 | 添加物を含む旨 | 保存方法定められている場合はその基準に合う方法※12 | 基準に合う使用方法定められている場合に | 主要原材料 | その他の表示すべき項目 | ||
マーガリン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 缶詰の場合に必要な表示 | |||
酒精飲料※1 | ○ | ○ ※5 |
○ | ○ | ○ ※13 |
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清涼飲料水 | 冷凍果実飲料 | ○ | ○ ※6 |
○ | ○ | ○ ※14 |
○ | 冷凍果実飲料の文字 | |
原料用果汁 | ○ | ○ ※6※7 |
○ | ○ ※7 |
○ ※7※14 |
○ ※7 |
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ミネラルウォーター類 | ○ | ○ ※6 |
○ | ○ | ○ ※14 |
○ | 殺菌に関する表示規制あり※17 | ||
その他の清涼飲料水 | ○ | ○ ※6※7 |
○ | ○ ※7 |
○ ※7※14 |
○ ※7 |
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食肉製品 | 乾燥食肉製品 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 原料肉名、乾燥食肉製品である旨※18、殺菌に関する表示規制あり※23 | |
非加熱食肉製品 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ ※15 |
○ | 原料肉名、非加熱食肉製品である旨※19、PH・水分※15、殺菌に関する表示規制あり※23 | ||
特定加熱食肉製品 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ ※15 |
○ | 原料肉名、特定加熱食肉製品である旨※20、水分※15、殺菌に関する表示規制あり※23 | ||
加熱食肉製品 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 原料肉名、加熱食肉製品である旨※21、殺菌に関する表示規制あり※23 | ||
魚肉ハム・魚肉ソーセージの類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | PH・水分※22、殺菌に関する表示規制あり※23 | ||
鯨肉ベーコンの類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 殺菌に関する表示規制あり※23 | ||
シアン化合物を含有する豆類 | ○ | ○ ※8 |
○ | ○ | ○ | 生あんの原料にのみ使用可 | |||
冷凍食品※2 | 切身またはむき身にした鮮魚介類(生かきを除く) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 生食用であるかないかの別 | |
その他の冷凍食品 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 飲食時に加熱が必要か、凍結前に加熱されたかどうかの表示 | ||
放射線照射食品 | ○ | ○ ※9 |
○ | ○ | ○ | 放射線を照射した旨 | |||
容器包装詰加圧加熱殺菌食品※3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 缶詰の場合に必要な表示 | 密封後、加圧加熱殺菌した旨(缶詰、びん詰を除く)※24 | ||
容器包装食品 /前各号の食品を除く |
食肉 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 鳥獣の種類 | |
生かき | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 生食用であるかないかの別 | ||
魚肉練り製品 | ○ | ○ ※7 |
○ | ○ ※7 |
○ ※7 |
○ ※7 |
PH・水分※7、※22、殺菌方法※7、※23 | ||
即席めん類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | めんを油脂で処理した旨 | ||
生めん類(ゆでめん類を含む)、弁当、調理パン、そうざい、生菓子類 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
ゆでだこ | ○ | ○ ※10 |
○ | ○ | ○ ※16 |
○ | |||
その他の加工食品 | ○ | ○ ※10 |
○ | ○ | ○ ※16 |
○ | |||
かんきつ類、バナナ | ○ | ○ ※5 |
○ ※5 |
○ ※11 |
○ ※13 |
※1 溶解してアルコール1%以上の飲料とすることができる粉末状のものも含む。 ※2 製造し、又は加工した食品(清涼飲料水、食肉製品及び鯨肉製品、魚肉練り製品並びにゆでだこを除く)及び切身又はむき身にした鮮魚介類(生かきを除く)を凍結させたものであって、容器包装に入れられたもの。 ※3 清涼飲料水、食肉製品、鯨肉製品及び魚肉練り製品は除く。 ※4 品質保持期限については賞味期限でもよい。 ※5 省略可 ※6 ガラスびん(紙栓をつけたものを除く)又はポリエチレン製容器包装に収められたものは省略可。 ※7 食品の種類、容器包装の容量、授受の単位、販売先等の条件(省略)により、送り状への記載でも可(識別記号が必要) ※8 輸入年月日である旨の文字を冠したその年月日 ※9 放射線を照射した年月日である旨の文字を冠したその年月日 ※10 缶詰、びん詰、たる詰、つぼ詰以外は省略可 ※11 防かび剤または防ばい剤の場合に必要 ※12 保存基準が定められていない場合常温で保存する旨の表示は省略可。保存方法の基準が定められている場合は、その基準に合う方法を、期限表示に近接して記載 ※13 保存方法の基準がない場合は省略可 ※14 保存方法の基準がなく、ガラスびん(紙栓をつけたものを除く)又はポリエチレン製容器包装に収められたものは省略可。 ※15 非加熱食肉製品又は特定加熱食肉製品のPH及び水分活性については、その保存方法によって記載例(省略)によることができる。 ※16 保存方法の基準がない場合で、缶詰、びん詰、たる詰、つぼ詰以外は省略可 ※17 二酸化炭素圧力が20℃で1.0kgf/c㎡未満のものであって、殺菌又は除菌を行っていないものはその旨 ※18 「乾燥食肉製品」と記載する。ただし、それぞれ「ドライソーセージ」、「サラミソーセージ」、「ビーフジャーキー」、「ポークジャーキー」も使用可。 ※19 「非加熱食肉製品」と記載。ただしラックスハムは「ラックスハム」も可。 ※20 「特定加熱食肉製品」と記載。 ※21 「加熱食肉製品」と記載。ただし、それぞれ「プレスハム」、「ウィンナーソーセージ」、「フランクフルトソーセージ」でも可。 ※22 魚肉ソーセージ、魚肉ハム又は特殊かまぼこであって、そのpHが5.5以下又はその水分活性が0.94以下であるもの(缶詰又は瓶詰のものを除く)にあっては、当該pH又は水分活性を記載する。 ※23 気密性のある容器包装に充てんした後120℃で4分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌したものについてのみ殺菌温度時間を表示(缶詰、瓶詰を除く)。加熱食肉製品にあっては「包装後加熱」、「加熱後包装」などと記載する。 ※24 食品を気密性のある容器包装に入れ密封した後、加圧加熱殺菌した旨(缶詰、瓶詰を除く)
表示の要領
1.邦文で、読みやすく、理解しやすい用語により正確に表示すること。
2.見やすいところに表示すること。小売用表示が透視できないときは外装に必要な表示をすること。
3.名称は食品の区分を表すものでなければならない。「珍味」は名称とは認めない。「珍味いかくんせい」等と固有の品名を表示すること。ただし、やむをえない場合は例外的に認めることもある。使用できる名称は通達(参考資料の③)で示されている。
4.品質保持期限(消費期限)年月日は「品質保持期限 平成10年12月1日」「消費期限 10.12.1」「品 質保持期限 1998.12.1」と表示し、これらの表示が困難な場合は「消費期限 101201」「賞味期限 981201」等も認める。
5.製造所所在地は住居番号まで正しく記載すること。ただし、次のように記載することは差し支えない。
イ)指定都市及び県庁所在地の市にあっては道府県名を省略することができる。
ロ)同一都道府県内に同一町村名がない場合に限り郡名を省略できる。
6.製造者氏名では、法人の場合は株式、合資、合名、有限 会社の名称を記載する。株式会社の「KK」、「㈱」、 「(名)」、「(資)」、「㈲」は認める。個人の場合は氏名を表示すること。個人商店の屋号等は認めない。「農協」、「経済連」は可。
7.製造所固有の記号は、原則として、製造者住所・氏名の次に表示する。やむをえない場合は表示位置を「賞味期限の左に記載」などとわかりやすく表示すること。
8.主要原材料名は含有量の多いものから表示し、原則として「主要原材料」の文字を冠する。
9.文字の大きさは食品衛生法では規定されていないが、JASで8ポイント活字以上、150c㎡以下の面積で6ポイント以上の活字、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」の種類別表示では8ポイント活字以上となっている。
10.保存方法の表示は、期限表示にできるかぎり近接して記載する。
11. 容器包装の面積が30c㎡以下の場合は表示を省略することができる。
上記の通りに表示すれば食品衛生法による基準には適合するが、他にも計量法、薬事法、JAS、不当景品類および不当表示防止法等、強制力をもつ表示基準が多くあるのでそれらの内容とも照合確認しなければならない。なお、乳および乳製品の表示については「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(環乳第29号 最終改正:平成10年3月30日生衛発第546号)により定められている。
(資料)
①食品衛生法第4条、第12条
②食品衛生法施行規則第5条
③食品衛生法に基づく表示について(環食第299号)
最終改正:平成10年3月30日生衛発第546号