LECTURE

食品包装基礎講座

食品の成分

 
CONTENTS 1.たんぱく質
2.脂肪
3.炭水化物
4.無機質
5.ビタミン類
6.水分
7.香気成分・色素・酵素等の微量成分
 

 
食品成分と性質

 一般に食品の成分は次のように分類される。

(1)たんぱく質
(2)脂肪
(3)炭水化物
(4)無機質
(5)ビタミン類
(6)水分
(7)香気成分、色素等の微量成分

 ある食品において、食品の種類と成分の割合がわかれば、その性質や悪変形態がある程度予測できる。その食品の原料、製法、用途等もわかればさらに好都合で、包装設計も容易になる。日本食品標準成分表による食品の分類は、穀類、いもおよびでんぷん類、砂糖および甘味類、菓子類、油脂類、種実類、魚介類、獣鳥鯨肉類、卵類、乳類、野菜類、果実類、きのこ類、海草類、し好飲料類、アルコール飲料、調味品類となっており、あらゆる標準的な食品の成分が記載されている。成分の項目はカロリー、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質、繊維)、灰分、ビタミンとなっている。

 さて、食品の成分がわかったところで、その食品の性質および悪変形態を予測しなければならない。そのためには、上記成分についての基礎知識を必要とする。
1.たんぱく質
 たんぱく質はアミノ酸が多数結びついたものと考えてよく、食品のたんぱく質を加水分解すると、普通18種類のアミノ酸を生ずる。アミノ酸の数とその結びつく順序によって多くの種類のたんぱく質ができることになる。人や動物の体の有機質の大部分はたんぱく質からできている。筋肉、血液、臓器、毛髪、骨などのほか、体内の酵素、ホルモンなどもみなたんぱく質から生成する。また生殖や遺伝にも重要な働きをしている。たんぱく質は栄養上脂肪や炭水化物で代用することができず、直接生命に関係する成分である。摂取されたたんぱく質は消化管の中で分解され、アミノ酸となって腸から吸収される。吸収されたアミノ酸は血液中に移り、組織に運ばれ、体組織のたんぱく質に組み立てられる。したがって、たんぱく質の栄養価はその中に含まれているアミノ酸の種類と量によって異なってくる。一般には、動物性たんぱく質を全てのたんぱく質の1/3以上摂取することが望ましいとされている。たんぱく質は60~70℃に熱すると熱変性が起こり凝固して溶けにくくなり、外観は固くなるが、消化はかえってよくなる。しかし、あまり熱しすぎると消化は悪くなる。たんぱく質が多く含まれている食品としては卵、肉、魚、種実類、乳類などである。つまり、微生物によって腐敗しやすい食品にたんぱく質が多い。たんぱく質の腐敗は食中毒を起こしやすい。
  
2.脂肪
 食品成分のうち、有機溶剤のエチルエーテルに溶ける物質を総称して脂肪または脂質という。その主なるものは油脂である。油脂は消化管内で加水分解され、脂肪酸となって腸壁から吸収される。吸収された脂肪は体内で酸化燃焼してエネルギーを生じるが、一部は体内に脂肪の形で貯蓄され、必要に応じて熱量素として消費される。脂肪のカロリーは高く、炭水化物やたんぱく質の2.25倍で、1gについて9キロカロリーの熱量を有している。一般に動物性油脂と植物性油脂に大別できるが、植物性油脂のほうが酸化しやすい。植物油脂の中でも、サフラワ油やオリーブ油のようにリノール酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸(二重結合の多い脂肪酸)を多く含んだ油の方が酸化しやすく、パーム油やパーム核油は酸化しにくい。また、組織の油脂よりも抽出された油脂のほうが酸化しやすい。

3.炭水化物
 食品成分表では糖質と繊維とを合わせて炭水化物としている。われわれになじみがある代表的なものはでんぷんと砂糖である。でんぷんはわかりやすくいうと、ぶどう糖が多数つながり合ったものと考えられる。でんぷんはカロリー源として大切で、消化管内でアミラーゼによって加水分解され、Dーグルコースとなって吸収される。動物は自分ででんぷんを生成する力がないので、すべて植物から摂取しなければならない。穀類やいも類にはでんぷんが多量に含有されている。でんぷんは水分が充分にあれば腐敗しやすい。発酵すればアルコールを生成して酒ができる。その他、のり用、食用、医薬用等用途は非常に広い。でんぷんについで摂取料が多い炭水化物はしょ糖(砂糖)である。しょ糖はぶどう糖と果糖に加水分解され、吸収される。
 繊維とは食べても消化されにくい炭水化物のことで栄養にはならないが、少量では消化管の運動を促進するのに役立つ。

4.無機質
 食品や生体に含まれる約30種類の元素の中で、たんぱく質、油脂、炭水化物など有機質の形になって存在するC,H,O,Nの4つを除き、Ca,Mg,P,K,Na,S,Cl,Fe,Cu,I,Co,Znなどを総称して無機質、無機塩類、ミネラルなどとよぶ。食品中に含まれるこれらの含量は一般に少なく、鉄(Fe)以外は微量である。しかし、微量でも重要な生理作用を司っている。骨の硬組織、筋肉・神経の収縮・興奮性などの機能、消化液の分泌、排尿作用などに関係し、生理的に重要な化合物、たとえば血色素、核たんぱく質、助酵素などに結合している。一般にアルカリ性食品には無機質が多く含まれている。組織の中の無機質は食品の悪変にはほとんど関係しない。

5.ビタミン類
 ビタミンは微量で動物の栄養を支配し、これらが不足すれば、いくらカロリーの高い食品を摂取しても、健康を維持し正常な成長をとげることはできない。ビタミンはすべて有機化合物で、体内では合成できないので外部から摂取しなければならない。ビタミンA,D,Eなど脂溶性のものとビタミンCなど水溶性のものがある。

6.水分
 食品の中に含まれている水分には、遊離水(自由水)、溶解水、結合水の3種類があり、一般に遊離水が食品の悪変に影響する。溶解水は食品の可溶性成分がとけ込んだ水のことで、結合水というのはたんぱく質や炭水化物と化学的に結合している水のことで、蒸発しにくく凍結もしにくい。0℃以下でも植物が生きているのは凍結しにくい結合水のおかげである。遊離水は単に組織に含まれている水分で、その量は外気条件により増減する。つまり、食品成分と結合していないので自由に食品と着脱できる水分のことである。食品の水分はその食品の貯蔵性と大いに関係があり、微生物は溶解水や結合水を利用することはできないが、充分な遊離水があれば繁殖することができる。このほか、吸湿・乾燥による食感の低下、害虫による被害、油脂の酸化等ほとんどすべての悪変形態に水分が関係している。一般には水分が少ないほど変化は生じにくい。

7.香気成分・色素・酵素等の微量成分
 食品には香りがあり、これがわれわれの食欲を刺激する。よい香りであれば食欲を増進し、香りが悪ければ減退させる。したがって、香りは食品としての価値を左右する重要な要因の一つである。食品の香気成分は発揮しやすく、また酸化または分解しやすく、出来たての風味を維持するのは簡単ではない。
 美しい色をもつ食品は食欲を増進させる。食品の色には天然の場合と人工的に着色した場合がある。保存性からいえば、人工的に着色したもののほうが良好であることが多い。また、一般には天然着色料よりは合成着色料の方が変色しにくい。また食品において酵素の働きも重要である。酵素とは、溶媒作用をもった高分子の有機物質で、細胞組織から分離してもその作用を失わない。たんぱく質の一般的性質をもっている。酵素の働きは重要であるが、変色、酸化、香りの変化など酵素の働きに起因する悪変もかなり多い。